ゲンコツ山の狸サン。 
      一杯飲ンデ、ニコニコして。 
      ゲンコツ合ワセテ、イチ、二のサン。 
      ヘンナ音がしました。
まったくもって、ほんとに真剣なのであります。 
         決して“力”加減はしないのです。 
        常に目一杯の力比べなのです。 
        約束事などありませんでした。 
        眼顔で解かるのです。 
        一、 二の三。……… 
        …………。 
        そして、次の日も。 
        ゲンコツ山の狸サン。 
        一杯飲ンデ、ニコニコシテ。 
        ゲンコツ合ワセテ。 
        一、 二の三。………。 
         見事に的を外す事もなく、ゲンコツは衝突するのでした。 
         又、次の日も。その数日後も。 
         まるで心が通じているかの様に、電話もしていないのに。 
         ニコニコしながら、ゲンコツ山の居酒屋にやって来るのでした。 
         でも、今日は、いつもと様子が違って居ました。 
         “ゲンコツ”が、以前より少し大きく成って居ます。 
         以前より、だいぶ、赤く赤くなっていました。 
         それでも、狸サン達は、ニコニコシテ。 
         イチ、ニのサン。 
         …………。 
       居ました。居ました。 
         又、一杯飲ンデ。ニコニコしています。 
         おや。今日は、以前とはもっと違っている様子です。 
         どちらの、ゲンコツにも包帯が巻かれているのでした。 
         “三角オニギリ”の様な形になっているのです。 
         それでも、ニコニコしながら、一杯飲ンデ居ルノデス。 
         イチ、二のサン。(ヘンナ音) 
         一杯飲ンデ、ニコニコシテ。 
         イチ、ニのサン。……… 
         (ヘンナ音) 
       ずいぶんの間、ニコニコ遊んで居ましたが、やがて、三度に一回程、上手に、ゲンコツが、合わなくなりました。 
         ゲンコツ山の狸サンが、顔を見合わせました。 
         眼と眼が会いました。 
         涙眼になっていました。 
         とっても痛かったのですね。 
         そこで、この遊び方は止める事にしました。 
         新しく、見付けた遊び方には、 
         かけっこや、テニスや、泳いだり、山に登ったり、スキーをしたり、そして、 
         いつも、いつも、あれもこれも、目一杯遊んで。いつも、いつも、仲間達と一緒に、 
         ニコニコして居るのでした。 
         とっても沢山の友達が、あったのです。 
         いつも、いつも一杯飲んで、ニコニコして居たのです。 
       
         編集者注 ケチを自認していた野口伊織は「ノゲチ」と、嫌なガキの稲垣真二は「ヤナガキ」と自称していた。
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